Diversity&Inclusion 部門(D&I部門)

東京大学は、UTokyoCampusに示された方針に基づき、2022年度には「ダイバーシティ&インクルージョン宣言」が制定されるなど、ダイバーシティとインクルージョンの一層の推進を目指しています。

けれどもこれは簡単に実践できることではありません。

従来のキャンパスに女性や様々なマイノリティを連れてくるだけでは、D&I(ダイバーシティ・アンド・インクルージョン、多様性と包摂)にはなりません。D&Iの推進とは、今まではそこにいることになっていなかった人々の存在を前提とし、あるいは存在していてもその経験や意見が重視されてこなかった人々の見解を踏まえて、従来の大学のあり方を変え、場を作り直し、議論を組み立て直すことに他なりません。そのための第一歩として、従来知らずにすんできたことを知り、考えずにすんできたことを考える必要があります。

教養学部前期課程では、東京大学の「ダイバーシティ&インクルージョン」の理念を支える学びの一環として、2023年度よりD&I教育が大幅に拡大して展開されます  https://www.utdandi.org 。障害学、植民地主義研究、フェミニズム科学論、ダイバーシティと法、社会正義論など、人文学、社会科学、科学技術論などの広範な領域にまたがる多様な講義が前期教養教育に組み込まれることになります。講義型の授業と並行して、特定のテーマについてより知識を広げ思考を深めたい学生たちのために、より少人数でのゼミ型の授業も提供されます。

前期課程D&I授業と協働して駒場キャンパスのD&I推進を支えるのが、2020年度に始まった駒場キャンパスSaferSpace(KOSS)https://www.utkoss.org です。KOSSは、ジェンダー、セクシュアリティ、障害、人種や民族などに関わるD&Iに興味をもった学生や、それらの問題を専門的に研究に従事する院生たちが、知識や経験を共有しつつ、互いの学生生活や学習を支え合う場です。セイファー・スペースとは具体的な「場所」であると同時に、相互のエンパワメントと学びのコミュニティをキャンパスの中に自覚的に作り上げるプロジェクトでもあります。KOSSの活動はキャンパス内にとどまりません。学外に向けたオンライン連続公開講座や公開講演会も開催し、D&Iに関わる様々な情報を発信しています。

前期教養教育のカリキュラムに組み込まれた多彩なD&I関連授業と、カリキュラムの外で研究者、大学院生、学生、さらには学外の人々が自由に交流しつつ多様で包摂的な学びの場を作り上げる実践に取り組むKOSS。この二つが、東京大学教養学部・大学院総合文化研究科附属 教養教育高度化機構のDiversity & Inclusion部門として、東京大学の前期教養教育の一環としてのD&I推進を協働して担うことになります。

キャンパスや大学、ひいては社会におけるD&I推進とは何を意味するのか、従来しばしば見過ごされてきた存在や経験や思考が、どのような学術的な分析と考察に結実してきたのか、その蓄積の上で私たちはどう思考し行動すべきなのか。東京大学における教養教育の重要な一環として、それを共に学び、考える機会をつくっていくことが、教養教育高度化機構D&I部門のミッションです。